本・音楽

竹取物語 3つの謎 ③ 姫と帝、それぞれのラスト。

投稿日:2019-09-16 更新日:

 

みまさま ご機嫌よう

「竹取物語」の謎を読む 三夜目。

実は、この物語の結びは、
姫と帝の2人が互いに宛てた
こんな歌からはじまるのです。

輝夜(かぐや)姫は
身につけると全ての記憶を消してしまう
天の羽衣を前に、こう詠みます。

『 今はとて天の羽衣著(き)るをりぞ
君をあはれと思ひ出でぬる 』

いよいよ 天の羽衣を着る段になり
帝を思えば お慕わしく、
気持ちも揺さぶられるのです

 

帝は姫がたくした
最後の手紙と不死の薬を前に、
こう詠みます。

『 あふことも涙に浮ぶわが身には
死なぬくすりも何にかはせん 』

もはや、逢うこともない身
不死の薬など もう何にもならぬ

 

『竹取物語』のラストは、
ただ姫が月に戻る・・
美しいシーンだけではなかった。

そんなことが語れるようになる
本日のお話しです。

 

 

 姫が 見せた別れの場面

それは

満月を背景に
天の羽衣(あまのはごろも)をまとった
輝夜(かぐや)姫の姿が 月へ昇って行く姿です。

羽衣。
それは、まとうことで
地上での記憶が すべて消し去られるという・・

 

 羽衣伝説


羽衣伝説 / wikipedia

羽衣伝説は、日本各地にあります。
その中でも 1200年前に書かれた
日本最古の伝説は
近江国風土記』に書かれている説話であり

他にも、
静岡県にある三保の松原の羽衣伝説も
謡曲・長唄・常磐津・一中・箏曲などで有名です

しかし
各地に残る説話でいう天女の羽衣
かぐや姫のいう天の羽衣のそれとでは、
微妙に性質が異なるようです

伝説の中の[天女のまとう羽衣]
天に帰るときに、空を飛ぶための道具であり
翼の役目を果たす晴れやかなものです

一方、
[かぐや姫にとっての羽衣]とは
人の世で知った愛や情けを消すもの
人の心から天人へと戻るための浄化の道具なのです。

後に
天女の羽衣は、縫い目がないことから
純真な飾り気のなさと、取りつくろう必要のない自由さ
という意味で
[天衣無縫]という言葉も生まれます

が、それに対し
かぐや姫の羽衣は、謡曲の中で語られる
「天に偽りなきものを」という言葉の方が
その意味の的を射ているのです。

羽衣ひとつでも、伝説と物語とでは
こんな解釈の差が生まれるのですね。

 

 帝が 見せた別れの場面

それは

帝の想いが、
富士(不死)の山頂から月へと
煙となって立ち昇ってゆく情景です。

これは『竹取物語』が
「富士山」という名の起源とされる
由縁でもあります。

 

 不死山

 

宝永の噴火以来、
300年の眠りについている富士の山。

いつ 目を覚ましても不思議ではない、
とされる富士は神聖な存在で

その昔、女人禁制のお山でした。
登山できるのは成年男子のみに限られ

今日のように
皆に開かれた山ではありませんでした。

 

帝は、かぐや姫が地上から去った後
哀しみに暮れ、お食事もお取りにならず

ある日、下々の者たちに尋ねます

いったい、何処の国のどの山が
天に一番近かかろうか。 と。

すると、ある者が答えます

「駿河の国にあるあの山が、
この都にも近く
また、天にも一番近うございます。」と。

帝は、それをお聞きになると
姫から贈られた壺の中の不死の霊薬に、自らの文を添え
それを中将に託します

中将はそれを受取り
兵士を大勢連れて不死の山に登ったのです

「武士」がたくさん山に登った
=「士に富む山」
=「富士の山」

その後「不死山」という名称は、
鎌倉時代に今の「富士山」になったと言われます。

中将は、その日本一の山頂で、
不死の薬と手紙とを焼きます。

そして、
その煙は月にまで立ち昇った
と、人々が伝えるところとなるのです。

 

如何だったでしょうか。

この有名な『竹取物語』の結びのシーンを
あなたは

姫の美しくも切ない月への昇天
で終えるのか

それとも

帝の届かぬ返事が白く立ちのぼる富士
で終えるのか

どちらを
心の風景におさめますか

どうぞ
あなたの心に叶う情景をみつけて下さい

もしかしたら・・

まだ別の謎が、あなたに見つけられるために
忍んでいるかもしれませんね

そんな風に また再び
あなたに楽しんで頂けたなら嬉しいです。

 

大人になって読み解く、不思議な物語り

三夜に渡り お付き合い下さった皆さまに
心より感謝申し上げます。

 

ご機嫌よう

 

竹取物語
川端康成 河出書房新社 2013年11月22日
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