言の葉

『恙無く(つつがなく)』語源と9つの類語。妖怪・恙は東北地方の川沿いに?

投稿日:2018-08-24 更新日:

 

みなさま ご機嫌よう。

本日も、
つつがなくお過ごしでしょうか。

 

ご存知の唱歌「ふるさと」にある
「恙なしや友がき」も、

そして「源氏物語」にある
「我が身に つつがある心地するも」も、

更に
聖徳太子が隋に宛て小野妹子に託した
国書にも記された「恙きや」も。

 

どのように使われたのでしょう。

本日は、そんな
いにしえの香り高い言の葉の裏側を
のぞいて参りましょう。

本日の言の葉は、「つつがなく」です。

 

 妖怪・恙

 

あなたは
恙という虫を、ご存知でしょうか。

日本では
斉明天皇の時代(655~661年)に
石見国(現在の島根県西部)に

「恙」が発生し、
多くの人を死に至らしめた為
天皇は、陰陽師に虫封じを命じ
これを封じさせたという話。

(竹原春泉「絵本百物語」より)

この
人の寝静まったころ家に入り込み
生き血を吸った

それは
目で確認するのが難しいほどに
微小ですが

発症すれば
頭痛・発熱・発疹・倦怠感
そして
刺し口近くのリンパ節が腫れ

死に至ることも多かったという。

しかし

刺されても 痛みを感じず
刺し口も 判りずらい

その為 これは
原因不明の病・妖怪によるもの
と語られたのです。

また

中国の長安を都とした前漢時代
噛まれると病になるという獅子に似た獣を
「恙」とした神異経や、
それ以前の
中国戦国時代の書物にも記されていて

それ故、
「恙」がいない平和な状態のことを
「恙ない」状態とされた・と
逸話が残されています。

日本では

東北で
平成28年にも発症の報告がなされ

秋田・新潟・山形などでは
川沿いにて感染する
風土病といされてましたが、

現在では
全国で感染される病
ひとつです。

 

 語源

 

ちょっと、
お待ちくださいませ。

では「つつがなく」 ・の語源は、
その妖怪・恙なのでしょうか?

確かに、「恙」とは「病」の古語です。

この文字には
病気・災厄・憂いの意味があります

または

「恙」は、「恙む(つつむ)」
ともいい
「包む」「収める」の意と

「勢いを失わせる」
「支障がでる」の意もあるのです。

ですから

「つつがなく」とは、
「病気も災難もなく無事」
ということになりますね。

それゆえに

「つつがなく、お過ごし下さい。」
「つつがなく、お暮らしですか。」
のように使います。

そう。
「つつがなく」

相手を思い、相手をいたわる
こころ優しい言の葉です

手紙の冒頭や、文末にあって
先方さまのお身体を気遣うときや
自身の息災を伝えるもの。

「つつがなく。」

実は、言葉の起源と、
恙の災厄とが 前後し
つじつまが合わぬため

その語源は、

恙虫では無い。
これを語源とするのは、誤りである。

というのが、
大方の見方なのです。

それでは、
「つつがなく」に似た言葉には
どのようのものがあるのでしょうか。

 

 9つの類語

  1. 滞りなく(問題なく順調に)
  2. 首尾良く(最初から最後まで滞りなく)
  3. 平穏無事に(穏やかで何事もなく)
  4. 予定通りに(スケジュール通りに)
  5. 順調に(常に真っ直ぐに前進して)
  6. 穏やかに(無事に静かに)
  7. 息災に(災い無く健やかに)
  8. 安泰に(安全に危険なく)
  9. スムーズに(摩擦なく滑らかに)

 間違えやすい使い方

 

一番、間違えやすいもの。

それは、結婚式や葬儀の場での

× つつがなく、終了いたしました。
○ 滞りなく、終了いたしました。

です。

もう お分かりのことでしょう。

「恙」の持つ
病・災厄の意味を考えたとき、

このような儀式の際に使用するのは
とても縁起の悪いことになりますものね。

 


 

如何でしたか?

本日は、
始めから いきなり横道に走り
たいへん失礼申し上げました。

ただ もしこれで

あなたの中に
記憶として残る言葉になってくれたなら
嬉しく存じます。

どうぞ
この美しい言の葉を

また あなたのお手元に
そっと お持ちくださいませ。

 

最後まで お付き合い下さり
ありがとう存じます。

では本日は、
これにて
おいとまいたしたく存じます。

 

ご機嫌よう。

 

-言の葉

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